便秘について
「便秘ってなに?」
なんとなくは分かっているのですが、あらためて質問されると難しいですよね。「毎日便が出ないこと」とか「1週間お通じがないこと」とか人によって様々な答えが返ってきそうです。日本内科学会によりますと
「3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」
を便秘の定義としております。
便秘になるとお腹が張ってきたり、頭痛がしたり、肌が荒れてきたり・・・色々な不調を引き起こしてしまい大変です。
では、便秘はなぜ起こるのでしょうか?
その前に食物を口から摂取してから肛門から排出するまでをみてみましょう。
【消化・吸収のメカニズム】
私たちは口から食物を摂取し、肛門から排出します。その口から肛門まで続く一本の管を「消化管」といいます。消化管の長さは約9mほどあるといわれ、その長い道のりの中で様々な器官によって「消化・吸収」がおこなわれています。
<消化器官の働き>
(図1 消化器官参照)
①口から摂取した食べ物は口腔で咀嚼され、食道を通って胃に送られていきます。
②胃の中で強い酸性の胃液と混ぜ合わさり、ドロドロに溶かされて十二指腸へと移動します。
③ドロドロに溶かされお粥状となった食べ物は、十二指腸で消化酵素と混ぜ合わさり、ブドウ糖やアミノ酸などの目に見えない栄養素へと分解され小腸(空腸・回腸)へと送られていきます。
④小腸では、ブドウ糖やアミノ酸などの分解された栄養素を必要な水分とともに体内に吸収していきます。食物繊維などの残りかすは吸収されず、消化液に混ざったまま大腸へと送られていきます。
⑤大腸に送られた残りかすは、そこでさらに水分を吸収され、固形の便を作りながら蠕動(ぜんどう)運動によって直腸へと送られていきます。
⑥直腸に便が到達すると、腸壁が刺激され便意を感じ、脳からの指令を受けて肛門から排便されます。
食べ物を口から摂取してから便となって肛門から排出されるまで、健康な人であれば24時間から48時間(※)ほどだと言われています。消化器官のコンディションが整っており、順調であれば「消化・吸収」、「排出」に至るまでスムーズに行われるのですが、大腸の動きに異常があるとその時間は大きく変わってしまいます。
(※)摂取された内容により異なる。果物、炭水化物は比較的消化が速いが、肉類はそれに比べると消化に時間がかかる。
次は大腸の働きをみてみましょう。
大腸では小腸から送られてきた消化物(食物残渣)を、水分を吸収しながら蠕動(ぜんどう)運動によって直腸へと送っていきます。水分を吸収された消化物(食物残渣)は大腸を進むにつれ固まりとなっていき、やがて固形の便となって肛門から排出されます。このとき、大腸の動きが順調であれば良いのですが、動きが悪くなると便の進行速度が通常よりも遅くなってしまい、水分が多く吸収されすぎて固くなってしまいます。そうして便が固くとなると、排出が困難となり便秘につながってしまうことがあります。逆に大腸の動きが活発になると、便の進行速度が通常よりも速くなり、水分吸収が不十分なまま直腸へと送られていきます。そうすると水っぽい便となり、軟便や下痢につながる可能性があります。
大腸の動き |
便の速度 |
水分吸収 |
便の状態 |
悪い |
遅い |
される |
カチカチの固い便 |
活発 |
速い |
されない |
やわらかい
水っぽい便 |
【便秘の種類】
では、便秘の種類ってどんなものがあるのでしょうか?
まず大きくは「機能性便秘」と「器質性便秘」の2種類に分けることが出来ます。「機能性便秘」はさらに「弛緩性便秘」「痙攣性便秘」「直腸性便秘」の3つに分類することができます。
器質性便秘
「大腸またはその周辺臓器の疾患により便秘になっている状態」です。医療機関の受診が必要です。
機能性便秘
「自律神経のバランスが崩れ、大腸の機能が正常に働かなくなったことにより起こる便秘」です。食生活や生活習慣を改善することによって解消することが可能です。
●弛緩性便秘
日本人に一番多い便秘のタイプです。大腸の蠕動運動が低下することによって便の進行速度が遅くなり、大腸内に長く留まってしまったため、水分が多く吸収されすぎて便が固くなり引き起こされます。女性や高齢者、運動不足の男性に多くみられます。筋力低下(腹筋力)、水分不足、食物繊維不足、無理なダイエットなどが原因としてあげられます。
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「和漢便秘薬」の使用に適しています。初回は最小量から便通の具合や状態をみながら少しずつ増量または減量し調節しながら服用してください。 |
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●痙攣性便秘
ストレス性便秘ともいわれており、弛緩性便秘の様に大腸の蠕動運動が低下するのではなく、ストレスによって蠕動運動が不規則になることによって起こります。症状は便秘だけでなく、便秘と下痢を交互に繰り返したり、逆に下痢が続いたりすることもあります。大腸の蠕動運動は、自律神経によってコントロールされていますので、その自律神経(※)がストレスによって影響され、痙攣するような過剰な動きや引きつったような収縮を起こしたりします。特に食後などは大腸が痙攣するような過剰な運動を行うため、下腹部に痛みを感じるのが特徴です。
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「和漢便秘薬」の使用は痙攣性便秘を悪化させる恐れがあるので、どうしても出ないときに頓服として使用するようしてください。 |
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※自律神経には交感神経と副交感神経があり、緊張状態にあるときは交感神経が優位になり腸の蠕動運動は抑制されます。またリラックス状態にある時は副交感神経が優位となり腸の蠕動運動は活発になります。ストレスを感じると緊張状態になるので、交感神経が優位に立ち、腸の蠕動運動は抑制され、便秘になります。
●直腸性便秘
大腸の蠕動運動は正常に行われており、便が直腸まで運ばれてきているのに「直腸・肛門」に問題があるために起こります。通常であれば、直腸まで便が運ばれてくると、その便によって腸壁が刺激され「便意」を感じ脳から排便の指令がでます。しかし直腸性便秘の場合は、慢性的に直腸内に便が溜まっているため、腸壁のセンサーが常に刺激を受けた状態になってしまいます。その状態が続くと、腸壁のセンサーが刺激に慣れてしまい、鈍化することによって「便意」を感じられず脳から排便の指令がだせなくなり、便秘になります。その理由には関係なく、日常生活の中で習慣的に「便意」を我慢することが原因と考えられています。
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大腸の蠕動運動は正常に行われているため、便秘薬による効果はありません。 |
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『 の 』 の字マッサージが効果的
“大腸の流れに沿ってマッサージして腸をほぐしていきましょう” 便秘にオススメです。
お腹の右下あたりからスタートし、蠕動(ぜんどう)運動と同じ時計回りの方向に、ひらがなの『の』の字を描くようにマッサージしていきます。
大腸の流れを意識しながら内容物を直腸へと送っていくイメージでゆっくりと行いましょう。
最後にお腹の左下当たり、S状結腸のあるあたりを手のひらで便を絞り出すように軽く指圧してください。